敷地は、都心から程近い近郊の住宅地。街区の北側を私鉄の高架橋が横断し、南側のT字路では三方向に車が行き来する。街中の家の多くがそうであるように、周囲の視界は隣家の壁と電線の束で遮られている。
キューブ状のボリュームの内部では、高さの異なる床と天井がルーズに場所を分けている。その切り替わりが互いにずれていくことで、場所と場所とは重なり合い、境界を曖昧にしながら上へと連なっていく。光天井と切り取られた方形の空によって頭上の広がりを感じ、内外をつなぐ床廻りのスリットによって、そこが地面から高い位置にあることを知る。
奥に行くにつれて高くなる床と、上下から内部を照らす自然光の広がりが、限られたボリュームの中に高さ方向の開放感を抱かせる環境をつくり出そうとした。
池村 圭造
写真/撮影 中川敦玲
用途: 一戸建ての住宅
構造規模: 木造/地上2階
敷地面積: 99.95㎡
建築面積: 59.72㎡
延床面積: 90.58㎡
住所: 東京都杉並区
設計・監理: 池村圭造/UA
施工: サトー企画
竣工年: 2013年11月