fu-house

設計主旨

敷地は東京・世田谷の30坪ほどの角地である。接する道路は二方向とも一方通行のバス通りで、付近にはテニスクラブや大使館、ゴルフクラブなど、閑静な住宅地の中でも、賑わいのある一角となっている。
そのような条件から、この住宅は建物の外に向かって閉じ、内部のコートに対し開く形式をとっている。しかし、通常のコートハウスとは異なり、内部に風車形に配置された4枚の壁柱の構成をもたせている。
コートハウスはその形式上、外部のコート空間を内部空間と一体的に囲む。外部に接した部屋では、外部も内部の一部であるかのように扱うことで、広がりや開放感が付与されるのである。しかし今回はその逆の、内部空間の外部化も併せ、そのふたつを融合させてみるよう試みた。風車形の壁柱の構成により、厚い外周壁に囲われた内部全体において、「内部のような外部」と「外部のような内部」を合わせた空間だけで、生活環境全体を形づくってみようということである。内部も外部化するために、風車形の壁柱は外周の壁から切り離して自立させる。そしてそれぞれに吹き抜け空間を沿わせることで、縦に抜ける空間と水平に広がる空間が、円環状に交互に並ぶのである。壁なのか、柱なのか微妙なプロポーションの壁柱は、外光を奥まで導いたり斜めに遮蔽したりと、それぞれの傾きに応じ、さまざまな光の状態を内部に映し出し、内外一体となった空間を見せる。
その交互にずれながら十字に広がる風車形の壁柱には、約10度の角度に膨らむ三角形のくさび型断面をもたせた。それにより空間内での自立性が強調され、周りに孕む空気の流動感も生まれる。10度に振られた軸線が別にできることで、空間全体の水平方向の動きもさらにつくり出される。壁柱に沿って階段状に捲れ上がるスラブもまた、その動きを強めている。
そういった操作によりつくられた、新しい意味での内外一体となった空間は、生活者と都市との関係も更新する。それは大きな都市空間に対する「個」が、内部/外部というふたつの領域をもつものとして対抗するのではなく、厚い外周の壁を境に、外部である都市空間以外は全て単純に新しい「内部」(=「個」)であるということを潔く引き受けるからである。そうすることがより直接的に都市と向き合って生活することにつながり、実感をともなって都市空間とひと都筑になれると思った。

 

押尾章治

設計/押尾章治/UA

所在地/東京都世田谷区
主要用途/専用住宅
家族構成/夫婦+子供3人
構造 鉄筋コンクリート壁式構造
地下1階 地上2階 ベタ基礎
敷地面積 100.39m2
建築面積 53.107m2
延床面積 99.05m2